ちょっぴり身近な自然を気にしてみると、ちょっぴり幸せな気持ちになれるかも?
いつも見ている風景が、毎日違って見えてしまう♪小さなトキメキを実感する!そんな自然系トピックスを紹介します。
皆さんは、ふと空に浮かぶ雲を見たときに、季節の移ろいを感じたり、雨の降り出しを心配したりすることはありませんか?童謡や絵本、絵画など、さまざまな物語や詩の中で親しまれてきた「雲」。
季節感を感じる雲から、憧れの美しい雲まで。ちょっとしたお出かけの途中で出会う、そんな身近な「雲の世界」を紹介します。
きっとあなたも、今日から少しだけ空を見上げたくなるはず。
世の中にある全ての雲は、“10種類”だけ

普段なんとなく見上げている雲。
世界共通の正式な分類があることをご存じでしょうか?
雲の形はバラバラに見えますが、国際気象機関(WMO)が定めた「十種雲形(じっしゅうんけい)」という“基本の10種類”のグループに分類されています。
これは世界中の気象観測で共通して使われるルールで、どの国でも同じ基準で雲を呼べるように決められたものです。
たとえば、
- ふわっとした “わたあめみたいな雲” → 積雲(せきうん)
- 夏の巨大な“入道雲” → 積乱雲(せきらんうん)
- 秋の空に広がる“うろこ雲” → 巻積雲(けんせきうん)
のように、私たちの身近な空もこの分類のどれかに当てはまります。
つまり、
空を見上げるだけで、世界基準の“雲の名前”を当てられるということ。
専門的な知識がなくても、この10種類を知るだけで、毎日の空がちょっとだけ楽しくなるんです。
浮いている雲の高さと形でわかる “十種雲形”

高い場所にできる雲【3選】
ここでは、地上から約5,000〜13,000mにできる“高いところにある雲”を紹介します。
高い場所にできる雲は、地上からぐっと離れた、とても気温の低い空に広がっています。
雲の形は、薄い布がふわりと広がったようで、輪郭はぼんやりしています。太陽の光と合わさると、不思議な光の現象を見せることもあり、繊細で美しい表情が魅力です。

飛行機に乗ったとき、「雲の上を飛んでいるな」と感じたことはありませんか?

あります♪飛行機の窓から、下に広がる雲のことですね

まさにあのあたりが、高い場所にできる雲が広がる高さです
① 巻雲(けんうん)
別名・愛称: すじ雲、しらす雲
巻雲は、空の最も高いところにできる、細い糸や羽のような形をした雲です。
ひとつひとつはとても薄く繊細で、風に引き伸ばされたように広がります。天気の良い日に多く見られ、上空の風の強さや天気の移り変わりをそっと教えてくれる雲でもあります。


② 巻積雲(けんせきうん)
別名・愛称: うろこ雲、いわし雲
巻積雲は秋によく見られる、小さな白い雲が空に並ぶ雲です。
ひとつひとつは薄い雲で、空に人差し指をかざすとその中に収まるほどの小ささです。整然と広がる姿はとても美しく、写真映えも抜群です。


③ 巻層雲(けんそううん)
別名・愛称: かすみ雲、白いベール
巻層雲は、形こそはっきりしませんが、空一面を薄い膜のように覆うことが多い雲です。
太陽や月のまわりに“ハロ”と呼ばれる淡い光の輪を生み出すこともあり、どこか神秘的で静かな美しさを感じさせてくれます。

“ハロ”はなかなか見られない現象です!


〜雲のリレーでわかる、雨サイン〜
高いところにできる3種類の雲は、出てくる順番で“今後の空模様”を教えてくれます。
まず現れやすいのは巻雲。これは、遠くで天気を崩す雲のかたまりが近づいているサインです。次に広がるのが巻積雲。空に模様のように並ぶと、「そろそろ天気が変わるよー」という合図になります。さらに進むと、巻層雲が空をふんわり覆います。雨が近い証拠です。

中くらいところの雲【2選】
ここでは、地上から約2,000〜7,000mにできる “少し高いところにある雲” を紹介します。
少し高いところにできる雲は、地上から見上げると形はわかるのに、どこか遠く感じるような高さに広がっています。
季節の変化や天気の移り変わりをさりげなく教えてくれるところが、この雲ならではの魅力です。
④ 高積雲(こうせきうん)
別名・愛称: ひつじ雲
高積雲は、白く小さな雲がびっしり並ぶことが多く、まるで羊の群れのように見える雲です。
秋の空によく現れますが、一年を通して観察できます。明るい日の空にふわっと広がる姿はとても爽やかで、雲の並び方によって表情が変わるのも面白さのひとつです。


⑤ 高層雲(こうそううん)
高層雲は、空全体を淡いグレーで覆い、太陽の位置がぼんやり透けて見えるの雲です。
季節の変わり目には特に出やすく、雨を降らせるほど厚くはありませんが、天気がゆっくり崩れる前触れとして現れることが多い雲です。空の変化をそっと伝えてくれる、静かな存在でもあります。


低いところの雲【3選】
ここでは、地上から約0〜2,000mにできる “低いところにある雲” を紹介します。
低い場所にできる雲は、建物のすぐ上に広がるため、形や厚みを観察しやすい特徴があります。
どんよりした曇り空の日もあれば、ふわふわの雲がゆっくり流れていく日もあり、その表情の豊かさを楽しめる魅力があります。
⑥ 層積雲(そうせきうん)
層積雲は、空を平らに覆いながらも、ぽこぽことした雲のかたまりが並ぶ雲です。
どんよりとした空になることもあれば、雲の切れ間から光が差し込むこともあり、天気の移ろいを感じさせてくれる雲です。穏やかな空の日にもよく現れ、日常の中で目にする機会の多い存在でもあります。


⑦ 層雲(そううん)
層雲は、地上近くをふんわりと覆うように広がる、とても低い場所にできる雲です。山や丘では霧のようにかかることも多く、視界がぼんやりとすることも。静かで落ち着いた雰囲気をつくるのが特徴です。
雲の動きはゆっくりで、形の変化もとても穏やか。晴れた日でも朝方にふっと現れ、時間とともに溶けるように消えていくこともあり、どこか神秘的な雲でもあります。

⑧ 積雲(せきうん)
別名・愛称: わた雲
積雲は春から秋にかけて見られ、特に夏によく発生します。
安定した晴天のときにできやすく、青空にぽっかり浮かぶ絵本のようなふわふわの形が特徴です。
なかには、思わず二度見してしまうような意外な形に変わるものもあります。


雨を降らす雲はたった2種類
ここでは、“雨を降らせる雲” を紹介します。
一口に雨といっても、しとしと降り続く雨もあれば、ゲリラ豪雨のように急に強まってサッと止む雨もありますよね。実はその違いは、雨を降らせている雲の種類によるものです。
雲には十種類ありますが、その中で雨を降らせるのは、なんとたったの2種類だけ。
⑨ 乱層雲(らんそううん)
別名・愛称: 雨雲
乱層雲は、地上から0〜2,000mほどの低い空にできる雲です。
梅雨や秋の長雨など、季節の変わり目に特に多く、空一面を灰色の布のように覆います。
激しく降る雨ではなく、静かに長く続く雨を降らせ、街全体をしっとり包み込むような状態をつくります。

⑩ 積乱雲(せきらんうん)
別名・愛称: 入道雲、カミナリ雲
積乱雲は、夏の空に急に立ち上がる巨大なもくもく雲です。
雷や豪雨、突風などを生み出す危険な雲でありながら、夕方の光を浴びると山のように美しく見えることも。
短い時間でぐんぐん成長するダイナミックさは、まさに夏の空のショータイムですね。


雨雲の名前には“乱”という文字が入るんですね
まとめ
空に浮かぶ雲は形も気まぐれですが、実は“10種類”に分けられる決まった仲間たち。
高い空にはふわっと繊細な雲、低い空には親しみのあるわた雲が広がり、その日の空模様や季節の気配をそっと教えてくれます。
雲に違いがあることを知るだけで、いつもの空がちょっと特別な空に見えてきます。
お出かけの際に、ふと空を見上げて、小さな変化を楽しんでみませんか。
〜参考文献〜
International Cloud Atlas「雲のコレクション」(古川武彦, 岩槻秀明 /洋泉社, 2013.)
「新・雲のカタログ」(村井昭夫, 鵜山義晃 /草思社, 2022.)
「空の図鑑」(村井昭夫 /Gakken, 2014.)

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